皆さんこんにちは!妻のしろです。
今回は最近読んで面白かった小説をご紹介します。
近藤史恵さんの「昨日の海は」です。
近藤史恵さんというと以前にもご紹介した「ビストロ・パ・マル」シリーズが有名ですが、今回の作品は全くテイストが違います。
引き込まれるように読んでしまいました。
「昨日の海は」
あらすじ
舞台の磯の森は四国の南側に位置し、海に面した温暖な気候ですが毎年台風の影響が耐えない場所。
子どもたちのほとんどが進学や就職のため大阪や福岡に出ていくような退屈な街で生活する光介も、大学進学とともに都会に行ける日を待ちわびていました。
そんな光介の家に東京から伯母が娘を連れて磯の森に帰ってきました。
伯母は「この磯の森で暮らしていくなら両親の死の真相を明らかにしたい」と、25年間閉め切ったままだった写真屋の店舗や屋根裏を片付け始めます。
実は光介の家は祖父母の代には写真屋をしていて、その祖父母は海で心中をしたのです。
一部では無理心中だったとも噂されています。
祖父は写真屋の傍ら写真の賞をとり、写真展も開くようなマニアには知られた芸術家だったことも、光介は伯母が帰ってきてから知りました。
まだ10代だった自分たちをおいていってまで死を選んだのはなぜだったのか。
そんな伯母の勢いに飲まれるようにして光介も自分のルーツにあたる祖父母のことを知りたいと思うようになります。
はたして祖父母の死の真相はなんだったのか。
家族の真実を追うお話です。
引き込まれる面白さ
このお話はよくある推理小説や探偵小説のような大きなスケールの事件を取り扱ったものではありません。
田舎町の一家のお話です。
ですが、壮大さには関係なく読み進めるごとに少しずつ真相がわかっていき、どんどん続きが気になってしまうのです。
少しずつ明らかになる祖父の写真家としての功績や祖父母の関係など光介は自分の祖父母のことなのに知らなかったことばかり。
私も光介と同じ気持ちで祖父母の意外な真相に驚きました。
何者にもなれない自分
16歳の光介は自分が大した才能もなく、ただ田舎を離れたいために進学することを望んでいました。
クラスメイトは夢をもって芸大や大学に行こうと考えているのに、光介には明確ななりたい自分というものがありません。
そんなさなか、伯母によってもたらされた祖父が写真家だったという事実。
自分にも写真の才能があるのではないかと期待し、カメラを購入してみたりします。
高校生という、ある程度自分がどんな人間かわかりかけている時期に将来のことを求められ、焦る気持ちや特別ではない自分への諦めの気持ち。
進路に悩む光介のもとにふってわいた家族の事件は自分にも何か特別なルーツがあることを期待させてくれるものだったのです。
全く違う印象の作品
冒頭でも書いたように私は近藤史恵さんの作品は「ビストロ・パ・マル」シリーズなど、食べ物を扱った作品ばかり読んできました。
以前紹介した記事はこちら↓
「ビストロ・パ・マル」も謎解き要素はありますが、今回の「昨日の海は」とは雰囲気が違います。
華やかなフランス料理店と四国の田舎町とではまったく印象が異なります。
どちらも魅力的な作品なので、ぜひ読んでみてください。
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